65歳の如月澄(松坂慶子)は、母親を亡くした後、弔いを行ってくれた住職・天野早雲(小日向文世)に「今まではお母様の介護に追われてきました。これからは、ご自分のやりたいことをご自由にやってみてはどうでしょうか」と言われる。
澄は、幼い頃から家業である花屋の手伝いや、祖父母・両親の介護などを行い、一度も家を出ることもなく暮らしてきた。そのため、恋愛や大学生活を経験せず、「籠の中の鳥」のようだったと、澄は母親の遺骨を持ってバスに乗り、今までの人生を振り返る。
そんな時、バスが揺れてバランスを崩した澄を、真白勇征(町田啓太)は支える。澄はそんな真白の行動に、ドギマギとしてしまう。
帰宅した澄は、母親の遺影が50代で亡くなった父親の遺影と、あまりにも年齢が離れていることを気にして、写真を代えてあげようとする。写真を納戸で探していたところ、黒猫とカキツバタの絵が描かれた屏風を見つける。
その屏風は子供の頃、澄が怖がって納戸の中にしまってもらったものだった。猫好きな澄は、その屏風を出してあげようと考えていたが、その時、屏風を触ってささくれ立った部分で指を切ってしまう。その血液が屏風に着くが、見る見るうちに血痕がなくなり、澄は不思議に思う。
その晩、澄は自分のアルバムを見て、「人生をやり直したい」と考えるようになる。友人たちとは異なり、青春や恋愛を経験できなかった自分の人生を振り返り、心残りに思っていたのだった。
そこで、屏風に封じ込められていた黒猫・黎(及川光博)が飛び出してくる。処女の血と強い願いにより、黎は封印が解かれたのだった。黎は、澄の願いを叶えるべく、澄に生気を分け与え、20歳の姿に戻す。
澄が黎の登場により驚き、気を失った後、3日が経過した。澄は、自分の姿が20歳に戻ったことに驚き、戸惑う。だが、黎は淡々と「願いを叶えるために姿を変えた。大学に通えるように手続きを行った」「これからは、澄ではなく、すみれと名乗れ」などと説明する。
早雲は、すみれの家から「獣のニオイがする」と怪しむ。化け猫である黎の存在を、感じ取っていたのだった。
すみれは、若返ったことにより、体が軽くなり、膝も痛くならないことに喜びを感じる。子供のように公園で遊び、はしゃいでいた。その様子を真白は見ており、微笑ましく思う。
翌日、すみれは眠れない夜を過ごすも、大学に通うことにする。65歳らしい「レトロな格好」に、すみれは周囲から浮いていた。帰ろうとするが、そこに真白が現れ、親切にも教室への案内をしてくれ、さらには大学構内を案内してくれ、感謝する。
同じゼミに所属していることが判明し、真白とともにゼミの講義を受けに行く。仲睦まじげなすみれと真白の様子を見て、真白に好意を抱く幸坂亜梨沙(水沢エレナ)は気に入らない。
すみれがゼミにやってきたこともあり、ゼミ生たちはカラオケに一緒に行くことになる。すみれは、カラオケに行くことも始めてであり、若い大学生たちに囲まれて戸惑う。さらに、すみれにイタズラを仕掛け、先に帰らせようとする。すみれは馴染むことができず、幸坂に「ウザいのよ。帰れって言ってるの」と言われ、意気消沈して帰路につく。
だが、そんなすみれに対し、黎は「あなたには65年の歴史が刻まれているのではないですか?65歳の老婆らしく、図図しくなさい!」と一喝。すみれはカラオケボックスに戻り、「このままでは帰れません。一曲、歌わせてください!」と言う。
真白に導かれ、すみれはずうとるびの『みかん色の恋』を熱唱する。一生懸命に歌うすみれの様子を、真白は「なんか良いなぁ」と眺めていた。
20歳として生きる第一歩を踏み出したすみれは、満足そうな表情を浮かべていた。黎も「これで、主であるあなたの願いを叶えることに近づくことができた」と言う。
すみれは帰宅し、入浴しようとする。だが、そこで自分の体から光が放たれ、65歳の澄に戻ってしまった。
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