村田沙耶香「コンビニ人間」あらすじ・ネタバレ

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簡単なあらすじ

1) 古倉惠子は、子供の頃から「変わった子」と思われていた。自らの言動や行動で、周囲を困惑させてしまうため、恵子は黙っていたり、言われたことをするだけにするよう心がけていた。

2) 恵子は、コンビニのバイトに出会い、マニュアルで全て行動する仕事を転職と感じるようになる。大学時代から18年、惠子はコンビニで働き続けていた。だが、年齢を重ねるにつれ、就職も結婚せずに36歳となった恵子のことを、周囲は再び奇異に感じるようになる。

3) そんなある日、35歳で職歴もない白羽が新人バイトとして入ってくる。彼は、婚活を目的にバイトを始めたのだという。だが、彼は女性客へのストーカー行為で解雇される。

4) 恵子は、懲りもせず女性を待ち伏せする白羽に声をかける。恋愛感情もないが、恵子は彼と一緒に暮らすことを提案する。そうすることで、恵子は「同棲している男性がいる」と、恋愛をしないことへの言い訳を手に入れる。

5) 白羽は、恵子にコンビニバイトを辞めさせ、就職させて自らの借金を返させようとする。だが、就職のための面接に向かう途中で訪れたコンビニで、恵子は本社の社員を装って、困っているバイトに手を貸す。そして、コンビニで働くことを自らの体が求めているのだと感じるのだった。

6) 恵子は「私は、人間である以上に、コンビニ店員なんです」と言う。そして、白羽との同棲や就職を行うことを拒否するのだった。白羽は「気持ち悪い。お前なんか人間じゃない」と言って、恵子のもとを去っていく。

7) コンビニの窓に映る自分の姿を見て、恵子は「この手も足も、コンビニのために存在していると思うと、自分が初めて意味ある生き物と思えた」と感じるのだった。

ここがポイント

幼い頃から、社会の中で生きづらさを感じていたが、「コンビニ」に出会うことでようやく居心地のいい場所を得られたという主人公の女性・古倉惠子。

そんな彼女の生活に入り込んできた男・白羽。世間の目を欺くため、惠子は白羽との”偽装同棲”を行ったり、バイトを辞めて就職をしようとするが、やはりコンビニに呼ばれるようにして戻っていく、というストーリー。

人間関係を面倒と感じたり、社会の中で生きづらさを感じる人が多くなっている中、共感する方も多いのではないだろうか。

起:コンビニとの出会い

古倉惠子は、子供の頃から「変わった子」と思われていた。小鳥が死んでいるのを見つけ、周りの子供たちが悲しんでいる中、「焼き鳥にしよう」と言いだして驚かせた。ケンカをする同級生を止めるため、スコップで殴りつけて流血騒ぎにしてしまった。

両親は惠子を「普通の子」にしようと、カウンセリングなどに通わせようとした。だが、惠子は変わることはなく、彼女は騒ぎを起こさないよう、黙ることで対処するようになった。

そんな彼女は、大学生になってコンビニ店「スマイルマート日色町駅前店」に出会う。そこでバイトを行うようになり、マニュアルが子細に決まっているコンビニでは、「部品」となって働けることに気づく。今までの世界では「異物」として排除されていた惠子は、ついに居場所をみつけることができたのだった。

承:白羽との出会い

大学時代から18年、惠子はコンビニで働き続けたのだった。同僚のバイトの喋り方や服装などを真似、目立たないようにしつつ、週5日、コンビニで勤務を続けていた。

そんなある日、スマイルマート日色町駅前店に新人バイト・白羽がやってくる。酷く痩せた35歳の彼は、異様な雰囲気をかもし出していた。マニュアル通りの仕事ができず、サボり癖のある彼はすぐにコンビニ店で浮いた存在となっていた。

白羽は、大学を中退後、専門学校も辞めていた。職歴はなく、そんな彼がコンビニでバイトを始めたのは、「婚活のため」なのだと惠子に語る。

惠子がコンビニに出勤すると、突然、白羽は解雇されていた。彼はコンビニの女性客へのストーカー行為を繰り返していたのだった。惠子は勤務からの帰り道、女性を待ち伏せしようとしていた白羽を見かける。惠子は、白羽を連れてファミレスに行き、話を聞く。

転:白羽の飼育

白羽は、「働いている女と結婚して、資金を提供させる。それでネットビジネスで起業するんだ」と息巻く。だが、実のところ白羽は、ルームシェアしている部屋の家賃すら払えず、追い出されようとしている無職の男だった。そんな彼に世間の目は厳しく、「どうして働きもせず、恋愛・結婚もしていないんだ」と疑問を突きつける。

白羽の話を聞き、惠子は「それならば、私と婚姻届を出し、一緒に暮らしませんか?」と提案する。惠子もまた、「なぜ36歳にもなってバイトを続け、就職や結婚をしないんだ?」という疑問に対し、言い訳を探していたのだった。

惠子は、白羽を家に連れ帰る。恋愛感情を抱くでもなく、彼女は白羽を住まわせ、エサを与えるだけの存在と考えていた。だが、「家に男性がいる」と妹に告げただけで、妹は大喜びしたため、惠子は白羽を家に置いておくだけでメリットはあるのだと考えていた。

惠子は相変わらずコンビニで働き、白羽は浴室で暮らし始めた。白羽の私物の処分に困っていた店長に、つい「渡しておきましょうか?」と言ってしまったため、勤務しているコンビニでは、惠子と白羽が付き合っているのではないか、という噂になってしまう。「どういう関係なの?」「同棲しているの?」などと、面倒な質問を浴びせられ、惠子は困惑する。

そんな中、妹が様子を見にやってくる。「働いていない男を浴室に住まわせ、エサを与えている」とありのままを伝えると、妹は「いつになったら治るの?」などと言い、泣いてしまう。見かねた白羽は、「実は元カノと浮気をしてしまい、怒った惠子に浴室に追いやられてしまった。今は働いていないが、就職活動中です」とウソをついて惠子の妹を安心させる。

奇妙な同棲生活が続く中、白羽の弟の妻(義妹)が惠子の部屋にやってくる。白羽がルームシェアの家賃を踏み倒したところ、実家に電話がかかってきて、母親が立て替えたのだった。その費用を、義妹は白羽に払わせようとしていたのだった。

白羽は、払うと約束する。惠子は白羽との関係を訊かれ、無職の白羽との同棲について話す。無職とバイトの30代男女の同棲に義妹は呆れる。だが、白羽は「今は彼女、就職活動中なんだ。俺が家事を行い、彼女が外で働く。それで借金は返す」と勝手に宣言する。

結:コンビニ人間

恵子は、白羽の宣言により、コンビニでのバイトを辞めざるを得ない。コンビニを辞めると、昼夜関係のない生活となってしまった。恵子は、コンビニのシフトに合わせて生活し、バイトのために健康管理・身なりを整えるということを行っていたのだった。今やバイトを辞めてしまったため、無軌道な生活を送るようになってしまったのだった。

だが、白羽が求人情報を調べ、履歴書を送ったことにより、面接を受けることになった。スーツを着て、白羽が案内して会社に向かうが、その途中で白羽はコンビニに寄って用を足す。

その間、混雑したコンビニは店長不在であり、バイトと新人バイトで対応せざるを得ず、彼らは困っていた。本社の社員を装って乱雑になった棚を整理し、レジの客が途切れたところで、飲み物の補充やドアの汚れを指摘する。バイトたちは感謝していたが、白羽は「何をしているんだ!」と恵子を叱りつける。

恵子は、「コンビニの『声』が聞こえるんです」と言う。「私は、人間である以上に、コンビニ店員なんです」と言う。そして、白羽との同棲や就職を行うことを拒否するのだった。白羽は「気持ち悪い。お前なんか人間じゃない」と言って、恵子のもとを去っていく。

コンビニの窓に映る自分の姿を見て、恵子は「この手も足も、コンビニのために存在していると思うと、自分が初めて意味ある生き物と思えた」と感じるのだった。

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