「おばあちゃん」前半部分(ネタバレなし)
中村陽子(深浦加奈子)は、義母の入院する病院へ向かうためバスに揺られていた。陽子は夫・真一(樋渡真司)に「なんで私達ばかりお義母さんに会いに行かなきゃならないわけ?お義兄さんたちも行けばいいじゃない」と不満を口にする。
真一は、「兄さんには子供がいないから。母さん、美保(柊瑠美)にも会いたいだろうから」と言って陽子をなだめようとする。だが、陽子は「行ったって、お義母さんは何も分かってないじゃない…」と言い、さらに不満を口にする。
不穏な空気の中、美保は赤ん坊の頃に会ったっきりの祖母に思いを馳せる。病室でベッドい横たわる祖母は、意識がないようだった。だが、美保は祖母の指がたしかに動いたように思う。
両親が医師の話を聞きに行き、美保は病室に残される。そこで、意識がないはずの祖母の「待っておくれ。行かないで…美保」という声が聞こえたように思う。そこから、美保は祖母と意思疎通ができることを喜ぶ。
だが、祖母は先が長くなく、「もうお別れだね…おばあちゃんが生きていられるのは明後日の朝までなんだ。おばあちゃん、死ぬ前に会いたい人がいるんだ…おばあちゃんの頼み、聞いてくれないか?」と言う。
さらに、「一目会えればいい。だから、美保の体を貸してくれないか?」と祖母は美保に頼むのだった。
死期が近い祖母。その頼みを美保は引き受けるのでしょうか?
「おばあちゃん」後半部分(ネタバレあり、結末まで)
祖母は、子供の頃に離れ離れになった弟に会いたいのだという。その弟を一目見るため、美保に「体を貸して欲しい。それができれば、もう思い残すことはない」と懇願する。
美保は、祖母の頼みを承諾し、「明日までに帰ってきてね」と言う。魂が入れ替わり、美保の体を手に入れた祖母は、陽子と真一とともに帰る。
祖母は美保の体を使い、弟ではなく「親に結婚を反対され、別れざるを得なかった元恋人」に会いに行く。彼もまた寝たきりで意識がはっきりしない状態だが、ようやく会えた喜びを噛みしめる。
だが、そこを元恋人の家族に見咎められ、「学校はどうしたの?」と問い詰められて補導されてしまう。母親に激怒されるが、一瞬のすきをついて(祖母の魂が宿った)美保はその場を抜け出す。
点滴が外れ、祖母の体はさらに死期が近づいてしまう。(祖母の魂が宿った)美保は、病院へと急ぐ。亡くなる間際、(祖母の魂が宿った)美保がようやく病院にたどり着く。
それから30年、母親が亡くなり、美保は「3年間、祖母のように病室で過ごした母・陽子」のことを振り返っていた。実は、「やり残していたことがあった」ため、祖母は美保に体を返してはいなかったのだった。
そのやり残していたこととは、陽子に自分と同じ長い寝たきり状態で辛い思いをさせ、復讐を果たすことだった。
「心優しい祖母」のイメージがあるため、このオチと動機は非常に恐ろしく感じます。この振り幅や、見事な伏線回収もあり、ストーリーとしては『世にも奇妙な物語』屈指の秀作だと思います。
ちなみにこの作品の脚本家・落合正幸さんは、草彅剛さん主演の『13番目の客』、『ミッドナイトDJ』、演出家として『扉の先』などの名作を手掛けています。
「おばあちゃん」制作情報
・脚本、演出:落合正幸